堂々完結です。
これまでありがとうございました。
なんと1年かかりました(-_-;)
あと、相変わらずこの作品は、グロ注意です
森の中に響き渡る骨が軋み、肉が潰れる音……
不気味な音だった。
1ミリも隙間のない2人の肉体から魂が搾り取られる。2人の目は白目を剝き、パクパクと金魚のように口を動かし小さな泡を吹きながらも闘い続けた。
本能が……2人の体に宿る魂が、相手の息の根を止めるまでその肉体をぶつけさせようとする。波のように肉が肉に打たれ、また打ち返す。
だがしかし、彼女たちのその肉体も限界を迎えつつあった。
修吾の目では、一生離さないと思われた2人が同時に相手の体を突き飛ばした。
———かと思えば、両者が途端に自分の喉を押さえて、のたうちまわった。
おぼれかけた人間が間一髪助かったときのような、短くとてつもない頻度の呼吸。苦しさのあまり流れでる呼吸が口にかかり、飛沫となって吹き飛んだ。
それこそ2人の息づかい以外の声は、その場から無くなった。死ぬ寸前の人間は、こうも苦しさを隠さずに苦しむものだろうか……
相手の顔は近くにある。殴られ腫れている目でもそれは微かにわかった。しかし、2人とも動けない。全身に襲い掛かる痛みと苦痛に、起き上がれない。
できるとすれば苦しむ相手に先にのしかかることくらい……
ギリギリの状態で体を奮い立たせる両者。
足はがくがくで、何度も2人は倒れた。
しかしその死闘の中…
瑞樹「……おええええええあああぁぁぁ……ぎ……い゛……んんん……んえううううううううううう!!!!!!!!!」
瑞樹が執念で菜々美の上に乗り、絞め合いを続行させた。今度は自身が上の状況で、菜々美の体をへし折る気持ちでベアハッグを仕掛ける。
ピンととがったピンクの乳首とその乳房が、菜々美の胸をそして心を屈服させるように、とてつもない重量を与えた。
技を仕掛けた瑞樹はその圧力に歯を食いしばり、歯の隙間から、唾液を滝のように流す……
一方で下になった菜々美は胃の中を全部出し切るほどの嘔吐をした。
菜々美「……おえええっえええええ!!!おええええええええええええええ!!!!!おええええええええええええ!!!!!ごぼっ!!んぶううう!!!あっ!あっ!あっ!おえええええええええええええええええええええ!!!!!」
渾身の絞めつけに、苦しみの波が何度も菜々美の体を打った。嘔吐物が暗い草木にかかり、変色する。がたがたと体が震えている。
涙を流しながら修吾は、菜々美に近づいた。もう信じられない光景に、ほとんど何も考えられていなかったが、
菜々美「おえええええええええええええ!!!!おえぐ!うええええぐ!!あううううう!!!!!」
吐きながらのたうち回る菜々美に、「死」という現実を見せつけられ、泣き叫ぶ……菜々美の表情からは苦しみ以外の感情が読み取れない。
死の寸前のような状態の菜々美が、修吾の方をゆっくりと向いた。
不思議とその瞬間、すべての音が止まったように感じた。
菜々美の口が動く……
「も、う、か、え、って……」
修吾「……え?」
菜々美が細い声を搾りだし終わると同時に、瑞樹の腰に菜々美の足が回った。
瑞樹「んええええええええええええええええ!!!!!ううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!」
びちゃびちゃびちゃ……!!
瑞樹の口から泡が飛び散った。その一部が菜々美の顔にかかる……もうはっきりと意識があるような状態ではない。そんな中、菜々美がものすごい勢いで横転して上下を入れ替えた。
何百キロにも感じる相手の肉体の重さ……でも負けられない……
足をぴくぴく痙攣させながら、ゆっくりと足を上げ、なんとか瑞樹も菜々美の体へ絡めた。
そして持っている全部の力を振り絞り締めあげた。
ばき……ぼき……びきっ……
ぐき……ごき……ぴき……
骨が歪み、筋肉がつり、激痛が体にはしった。
ゆっくりと2人の体がゆりかごのように転がった……わずかな優位の奪い合い。
菜々美が瑞樹をひっくり返しては、全く同じ軌道でひっくり返される。
ひっくり返され下になるたびに、虫のような声が少しだけ苦しみを増し響き渡る。
無限に思えるほど通った2人の体の軌跡が、修吾の目に焼き付いた。
そしてもう2人とも相手の体を回すことが、できなくなったとき、2人は横向きに倒れた。
ぼごっ!
菜々美の顔が瑞樹の拳で潰れた。
ぼぐっ!!
瑞樹の顔が菜々美の拳で血まみれになった。
指の骨が折れながら、2人はついに息の根が止まるまで殴り合った。
その命が尽きるまで……
ぼごっ!ぼきっ!
ぼごっ!ばきっ!
ぼご……!!
ぼご……!!
ばき……
ばき……
お互いに顔面に打ちあったパンチの数は100を超え、もう戻らないのではないかと思うほど顔が腫は腫れた。
腕が上がらない中、最後の一発……
お互いが思い切り腕を引き、僅かに腰を浮かし、振りかぶった。
修吾が止める間もなく、その2つの拳は勢いよく交差し、白目を剝く相手の顔面へ深くねじり込み合っていた。
その姿のまま世界は数秒間時を止めた。
ぐきっ……
鈍い音が響いた……
2人の鼻からありったけの血液が飛び出し、そして……
1人の雌豹が絶命した。
季節は夏。
牧場の草原は濃い緑色に生い茂り、風に吹かれている。丹念に毛並みを整えられた牛たちがのんびりとその草を通過し、黒い影がさした。
日差しはものすごく強い。
麦わら帽子をかぶった修吾が、椅子に浅く腰かけ口を開いた。
修吾「あの日のことは今でも覚えていますよ、たまに夢に出るくらいで……」
椅子に浅く腰を掛けた修吾が話した。
あの日と何も変わっていない部屋、景色、牛たち。
まるで修吾だけ大きくなったようだった。
修吾「本当に命を奪い合うなんて、思いませんでした。まだ高校生だった2人が、あそこまでやり合うなんて」
顔が少しだけ暗くなる。あの日の血の匂い、嘔吐の匂い、骨が折れる音、雌と雌が必死に己の命を賭け衝突する記憶が走馬灯のように駆け巡る。子供ながらに見たその光景は、成人した今でも忘れられなかった。おそらくこれから続く一生の中で、このことを忘れることはないだろう。
「それがあの子の定めだったからね」
菜々美の母は言い切った。優しく微笑みながら、同じく椅子に腰かけた。
修吾があとから聞いた話……
修吾があの夏に来る前の年、一ノ瀬美羽という女性が雌豹の儀に選ばれ、相手の村の代表を殺した。村の連敗を止める勝利に、菜々美の村の住民は喚起し彼女をあがめたが、次の雌豹の儀に向けた選別の時……
篠崎菜々美と一ノ瀬美羽の殺し合いのような1戦目にて、菜々美は美羽を殺めた。
激しい重圧の中闘い続ける1年だった菜々美……負けることは許されなかった。
修吾「それが菜々美さんが、闘い続けた理由。強かった理由なんですね」
「修ちゃんが来てから、あの子は楽しそうだったよ」
修吾は菜々美と最初にあってから、数日のことを思い出した。
人生で一番早く過ぎ去った、僕たちの夏休み。
「でもね、私いつも思うの」
風が修吾たちの部屋を突き抜けた。ふと、麦わら帽子を押さえる修吾。
「菜々美の生きたい気持ちが、強く芽生えたんだって。」
修吾「どういうことです、お母さん?」
「修吾君なにしてんのーーーーーーー!」
遠くで声が聞こえる
修吾「行ってきますね」
修吾は靴を履いて走り出した。
菜々美の母が見たその背中は、大きかった。
菜々美「お相撲で勝ったら何でも教えてあげる」
- 2018/06/15(金) 02:38:31|
- 僕たちの夏休み|
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コメント:12
完結ご苦労様でした! すごい期待していた作品がこんなに完結から残念だがあまりにも素敵でした!!! こんなに殺伐としたエンドとその後の短い話を見てとても興奮しますね!
- 2018/06/15(金) 09:12:20 |
- URL |
- log #OQ.koiZM |
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完結お疲れ様です!
賛否あるみたいですがあたしは好きでした!
今度時間があればでいいんですが、一番好きな若奥様の遊戯の続きとかその類のお相撲系がまた読みたいです!
これからも体に気をつけて頑張ってください!
- 2018/06/16(土) 22:51:01 |
- URL |
- 兎 #- |
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logさん、応援ありがとうございました!
お気に召していただければ幸いです!
その後の話も今回は簡単に入れてみました。より小説っぽくなればよいかなと思ってます
> 完結ご苦労様でした! すごい期待していた作品がこんなに完結から残念だがあまりにも素敵でした!!! こんなに殺伐としたエンドとその後の短い話を見てとても興奮しますね!
- 2018/06/17(日) 02:45:55 |
- URL |
- さくら1511 #- |
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裏行戯さん、コメントありがとうございます。
流石しっかり読んでいただいて嬉しい限りです。
あと、ずっと応援いただいてありがとうございました
大変励みになりました。おかげさまで簡潔に至った次第です。
これからも見続けていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします!
> 内容が内容だけにこの結末を望んでいましたが、
> あまりにも凄惨であり、ある意味、菜々美さんが
> 修吾君と一緒になりたい気持ちが、生き残れる
> 可能性を作った内容がまた素晴らしく思いました。
>
> 今回はまだ菜々美さんルートだったからある種、
> 安心していたけどまさか本当にここまでするとは
> 思いませんでした。
>
> 素晴らしかったです!!お疲れ様!!
- 2018/06/17(日) 03:04:41 |
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- さくら1511 #- |
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兎さん、コメントありがとうございます!
初めましてですかね。若奥様の遊戯がお好きですか!相撲のような肉体と肉体のがっつりぶつかる闘いは、
私も好きなので今後書くと思います。
その時は何卒よろしくお願いいたします。
> 完結お疲れ様です!
> 賛否あるみたいですがあたしは好きでした!
> 今度時間があればでいいんですが、一番好きな若奥様の遊戯の続きとかその類のお相撲系がまた読みたいです!
> これからも体に気をつけて頑張ってください!
- 2018/06/17(日) 03:11:36 |
- URL |
- さくら1511 #- |
- 編集
jkllmさん、コメントありがとうございました!
応援ありがとうございました。
面白いと言っていただけて非常に嬉しいです。
> すごく面白かったです! ありがとうございます!
- 2018/06/17(日) 03:26:52 |
- URL |
- さくら1511 #- |
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オゾンさん、コメントありがとうございます。
あ、最後の母のセリフは素直に、
菜々美が生き残ったことに対する言葉ですね。
素直に生還した後の後日談として考えていただいて大丈夫ですー
> いつも楽しみにしてます
>
> 読解力がなくて、母の言葉を深読みすると、
> 最後の奈々美は幽霊ですか?
>
> 1年の大作、凄いです!
- 2018/06/18(月) 00:17:04 |
- URL |
- さくら1511 #- |
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後でコメントしようと思ってたら1ヶ月経ってしまった…
菜々美さん日常パートでは結構落ち着いているように見えたのですが、実は物凄いプレッシャーと戦っていたわけですね
修吾くんには悟られないようにしていたのでしょうか
幼い弟分に弱気になっているところを見せないために毛高く振る舞う少女、最高です!
ストーリーは菜々美の勝利で幕を閉じたわけですが、雌豹の儀自体は翌年、翌々年と続いていくわけですよね?
続編もいけそうな感じですよね!
他にも、瑞樹の村にスポットを当てたり、菜々美母や修吾母が参戦する?過去編なんかにも展開できそうなので、期待しちゃったり…
遅くなってしまいましたが、一年にも及ぶ長編、完結お疲れ様でした
次の作品も楽しませてもらいます!
- 2018/07/23(月) 01:02:27 |
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- 時々喋ってた名無し #- |
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コメントありがとうございます。随分長い間かかってしましました。
作品からいろいろと読み取っていただいて有難うございます。
菜々美の心情については、書いていただいた通りの内容をイメージしていました。
続編については考えていなかったですね(笑)
別の観点から書けなくもないので、考えても面白いかもしれませんね
> 後でコメントしようと思ってたら1ヶ月経ってしまった…
> 菜々美さん日常パートでは結構落ち着いているように見えたのですが、実は物凄いプレッシャーと戦っていたわけですね
> 修吾くんには悟られないようにしていたのでしょうか
> 幼い弟分に弱気になっているところを見せないために毛高く振る舞う少女、最高です!
> ストーリーは菜々美の勝利で幕を閉じたわけですが、雌豹の儀自体は翌年、翌々年と続いていくわけですよね?
> 続編もいけそうな感じですよね!
> 他にも、瑞樹の村にスポットを当てたり、菜々美母や修吾母が参戦する?過去編なんかにも展開できそうなので、期待しちゃったり…
>
> 遅くなってしまいましたが、一年にも及ぶ長編、完結お疲れ様でした
> 次の作品も楽しませてもらいます!
- 2018/08/06(月) 02:26:20 |
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- さくら1511 #- |
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